厚切りの牛タン
前項の説明で、「ギュウタンに麦飯」という組み合わせの理由がわかったと思います。実際には、佐野氏が仙台市都心部の「太助」という店で、1950年に初めてメニューとして出されたそうです。一応これが「仙台牛タン」の発祥年としているようです。(諸説あります)
ちなみに、この1950年には、炉端焼きの発祥とされる「炉ばた」という店も開業しています。やはり炉端焼きも、当時の食糧やエネルギー事情を背景に出てきたのでしょう。現在、牛タン料理は「仙台名物」とまで称されていますが、そこに至るまでには紆余曲折もあったようです。
1978年に登録されたブランド牛肉「仙台牛」などとは全く無関係ですが、マスメディアで混同されることも多いようです。仙台の牛タン料理は、専門店でも材料自体は安価な米国産、豪州産を使用しています。(例外的に仙台牛を用いた高級メニューの牛タン専門店も存在します)
仙台の牛タン料理専門店の牛タンには大きな特徴があります。皆さんご存知なことですが、一般的な焼肉屋と比べると基本的に厚切りであるということです。注文を受けてから、焼き台(炭火など)で片面ずつ、何度かひっくり返しながら焼かれ、皿に並べて出てきます。この厚みの食感がたまらないのですが、下処理においては、牛タンの皮部分を削ぎ落し、やや厚めにスライスしてから、スライス両面に浅く切り込みを入れ、塩・コショウなどで下味が付けられています。
味付けは「塩」以外に「醤油タレ」、「味噌タレ」も定番になっていますが、これを冷蔵庫で数日間寝かせて味を充分に馴染ませてから使われます。「仙台の牛タンはなぜ美味いのか?」、それは厚みならではの工夫ということでしょう。